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薔薇 そして、寝巻き姿のローズの姿を見て唖然とする。そして紳士らしくふいとすぐさま視線をそらせる。 なんだ、どうしたんだろうと自分の姿を見たローズはあまりのことに絶叫した。 「ぎゃあああああああああああああ」 「ま、待って。ローズ。早く何か、上に」 言われなくても、とローズは近くの寝台の上のシーツを引きずり落とし、頭からすっぽりそれをかぶった。 啖呵を切ったのはよかったが、薄手の寝巻きで切っていたなんて。透けはしないが肌着に近かった。ただしレースがこれでもか、というほどあしらわれていたおかげでまだ助かった。 「どうなさったのですか? お嬢様」 こちらはさすが執事。冷静な判断を下そうと事情の説明を求めた。 「ええっと。ちょっと妙なものが窓の外に見えて・・・・・。ああ、あと窓も急に開いたのよ」 しどろもどろになりながら、何とか説明するお嬢様を横目に、有能な執事は開け放されていたベランダに面する窓をきちんと閉め、雪の入り込んだ絨毯の染みに目を落とした。 ああ、染み抜きが大変だ。ただでさえニューヨークの大気はよくないというのに。 「お嬢様。ここは三階ですよ。妙なものが窓の外にあるわけが無いでしょう。大方リスか何かではないのですか?」 「あ、まあ、そうかも」 「リス・・・・・」 がっくりと肩を落としたのは婚約者の一大事とばかりに部屋に飛び込んできたクランスだ。ローズはその手前、上手くごまかせてほっとしている。不審な男との密会が知れれば、本人にそういう気がなくても、大問題である。 けれど新たな疑問が浮上した。 あれ? でもさっきの男。一体どうやってここに入ったのかしら? 屋敷の中を通ってきたのならば執事が気付いていないはずが無い。じゃあ、一体。 ここは三階。執事が言ったとおりだ。一度だけ、ここから飛び降りようと考えたことがあるが、とんでもない。どういうことになるか想像できるだけに二の足をふんでしまった事を思い出した。ならば、彼は一体どうやってここから着て去ったのだろうか。どうしよう、もし死体でもあったら。 とんでもないことをした奴だけれど、いざ死んでしまうということになればわけが違う。 「失礼します。アルバート伯爵がいらっしゃいました」 扉の向こうから従僕のはっきりした声が耳を打った。 ローズは思考を戻して婚約者を見た。 「すぐに行く。旦那様には私からお伝えするから、お前は支度が無論整っているか確認してくれ。 「わかった。ローズ、君は」 ここで寝ていろ、とクランスは言いたかったのだろう。 けれどもローズはそれどころではなかったし、第一クランスの面目を潰してしまうと考えた。一応これでもローズの婚約者であり、ゆくゆくは夫となる人である。自分の都合で何でもかんでも振り回すことは許されない。おまけに頭痛はもう治ったし。ここで大人しくしていては狸寝入りではないか。 シーツを頭からかぶったままのローズは、顔だけ出してこう述べた。 「行くわ。すぐに支度をするから」 「そう言うと思った・・・・」 こうなればもうテコでも絶対に動かない。 諦め混じりに嘆息して、クランスは部屋を出て行った。 取り残されたローズはとにかくくるくるになった髪の毛をどうしたらよいか、思案した。
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