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開幕
もちろん警察の連中に犯人が捕まえられるはずもねぇ。だからよ、俺がここまで来たんだがな。 おおっと、うっかり口が滑った。今のことは忘れてくれよ、お二人とも。 あ? もう少し詳しく? おっと、もうこんな時間かぃ。さてと。すっかり酒が冷めちまった。 ああ、もう一杯? 冗談はよせよ兄ちゃん。俺はもう一杯だ。 悪ぃが、これからいかねぇといけねぇ場所があるんでな。 いけすかねぇクソみたいな連中とつるまねぇといけねぇと思うだけで、反吐が出るってもんだが、仕事だから仕方がねぇ。 ああ、くだんなかったが楽しかったぜ兄ちゃん。 もう一杯おごるから・・・・ってなぁ。そそられるが、それはできないな。悪いな兄ちゃん。俺は今からいかねぇといけねえ場所がある。 はあ? 野暮なこと聞くな! 俺はまだ恋人はいない!! ったく、俺を何歳だと思ってんだ。 えぇ? 四十七歳ぃ? 馬鹿にしてやがんのかこのやろう!! 俺はまだ、四十二歳だ! 頭をまるぞりにしてるとこれだから。 さっきの話はアレで終わりだ。いいな、兄ちゃん、姉ちゃん。何で釣ろうとしたって無駄だ。びた一文もまかんねぇぞ。 じゃあな、とそれは言ってグレーの上着の内ポケットからよれよれにくたびれた帽子を取り出した。それをパンとはたいて頭に乗せ、扉を押し開けて外に出て行ってしまった。 薄汚れた扉の上にかかる渇いた鈴の音がざわざわと騒がしい店内に響き渡った。 薄暗い暖色の光が天井から八方に広がり渡り、その丁度ひときわ暗い部分、カウンターに影を落とす。 先ほど店を出て行った男が座っていた席の両隣には左右に一人ずつ二人の男女が座っていた。男性は席をその空席に移して女性の隣に座ると、にっこりと微笑んだ。 「ずいぶん酔ってましたね」 明るい金髪の青年が隣に座る赤い唇の美女に話しかけた。 女性は視線だけで頷くと、綺麗な笑みを口に浮かべてグラスに口をつける。 「今の話、どう思いますか、エミリア姉さん」 エミリアと呼ばれた女性はグラスを手で弄びながら、そのガラスの表面に移る周囲の情景に視線を移した。そして、小さくと息を吐くと、グラスを机の上において横から青年を眺める。 「十中八句本物ですわね、エヴァンス。いいえエヴァ。眉唾だらけのほかの連中の話とはわけがちがいますわ。ということは、どういうことか分かりますわよね?」 エミリアは嫣然と笑った。傍らにいたエヴァンスは、片眉を上げて、仕方なさそうに微笑んだ。 「さっきの男性。もっと詳しい情報を知っていそうですね。関係者、という確率が高いと思います。彼から話を聞きだすのもいいとは思いますが、そうですねぇ。さすがに全てははいてくれそうにないでしょう。グラスの中に自白剤を入れたのにも関わらず、アレだけしか吐かなかったのですから。さて。どうしますか、エミリア姉さん」 空になったグラスの底に小さく泡を発する小さな白い塊が二つほど落ちていた。琥珀色の液体の、そのそこに眠る氷のさらに下に沈んでいたそれはしばらくすると四つか五つに砕け、後はなんら変わりなく液体と交わり姿を消した。 「結構な根性の持ち主ですね、彼は」 「そうねぇ。エヴァ。ああいう人間が身内にいたら助かるでしょうけれど。・・・・まあ、いっても始まりませんし、そろそろ行きましょうか。詳しい情報は手に入れそこなったけれど、漁港・・・・でしたわね? もしかしたら私の知り合いがそこへ行っている確率もなきにしもあらず。片っ端から連絡をとるように指示しましょう」 「そうですね。それがいいと思います。それにしても、彼女がいたらこんなまどろっこしいことをせずにすんだのですがね」 明らかに肩を落として、エヴァンスが言った。 エミリアもそれに同意を示すようにぼんやりと面を持ち上げて、グラスをぐいと掴んで一気にあおった。 「必ず見つけますわよ。あのどうしようもない猛獣のような人を、エヴァンス。
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