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薔薇 『なあ、 ひどい耳鳴りと頭痛、そして吐き気がする。 これは耐えられるものではない。 たまらずその場にかが見込んだローズは耳の奥に聞こえる声に、吐き気がしそうだった。深淵から湧き上がる沼のような声だ。ちかちかと目の奥が発光して、閃光を放つ。 『ローテローゼの花言葉を。そうだろ? 最後に掠れて聞えた言葉、耳にした瞬間に意識を手放したローズは絨毯の上に倒れこんだ。 銃弾を二発、三発打ち込んで、その人物は美麗な顔を歪ませた。舌打ちして、それから傍らにいる少年に声をかける。 「K! これで何匹目なんですの? 全く、キリがありませんわ!!」 もう一発それの頭目掛けて引き金を引けば、吹雪に掻き消されて音は聞こえなくなる。 「があああああああ!!」 脳天に穴が開いてそれが雪の上に倒れこむ。そしてそのまま、衣服だけを残して塵になって消えた。 Kと呼ばれた少年はゴーグルを付けたままの顔を隣の美女に向けた。赤い唇が印象的な金髪の美女は照準を定めながら、新たに湧いてきたそれにまた舌打ちをした。 「おーい!! エリー! こっちは片づいたぜぇ!!」 遠くから轟音、では無くただでかいだけの声が聞こえてきた。 うんざりした様子でエリーはそれを見た。 図体がでかい隻眼の大男がこちらに歩いてくる。 「五月蝿いですわ、フィリップ。そんなに怒鳴らなくても聞えています。K!」 「はいはい。エミリア、ちょっと待ってよ。・・・ええと、あれは四件目、本日七匹目の殺人鬼、だね」 隻眼の男はばつが悪そうにぽりぽりと頬をかいた。そして、ざっと鋭い目をそれに向けた。 「来たぜ、エリー。団体さんのお着きだ」 「言われなくても見ればわかりますわ。全く、とんだ誤算ですわね」 銃を構えて、エミリアは笑った。 全くとんだ予想外だ。今、奴がここに来ているなんて。でまかせか何かだと思っていたのに。そのおかげで双子の弟は表の作業に終われる始末。そう考えるとおちおちしていられない。自分だっていつ駆り出されるかわからないのだから。 そのおかげで、秘密が外に漏れることが少ないという事実はあえて無視しておく。 「フィリップ! 日常ではあまり役に立たない図体を思う存分発揮する時でしてよ!!」 「相変わらずひでぇ」 びしりと言って、エミリアは引き金を引いた。 空の薬莢が飛び散り、銃口から煙が上がる。それでも続けざまに撃ち尽くす。乾いた音、発砲音と白煙が空間を支配し始める。 赤い液体が雪の上に滴り、赤い眼をしたそれがこちらを見上げた。 「エミリア!! ちゃんと急所があるんだから、それを狙ってよ!!」 悲痛な叫びもむなしく、それが建物の最上階にいたエミリアを見つけ、飛び上がってきた。壁に足をかけ、おおよそ人間ではありえない跳躍を見せ、上り詰める。そして、真っ向から対峙した。 「わたくしは後方支援専門ですの! 接近戦はフィリップにお任せしますわ」 にっこりと微笑んで、エミリアは脇の下に銃を滑り込ませ引き金を引いた。 「ぎゃん!!」 Kの背後にいつの間にかいたらしいそれの急所に命中し、もう一発、今度は頭に打ち込む。無論視線はそちらに向けていない。 「エ、エミリア!!」 何するんだよ、と半泣き状態でKが噛み付いた。 けれど当のエミリアは飄々とした様子でこういった。 「死なないから大丈夫ですわ。それに、外れたことがあって?」 「うう・・・ひどすぎる」 けれどそれは真実だったのでKはそれ以上何も言わなかった。ただ無言で涙をぬぐう。 エミリアは空になった弾層を銃から抜き、それを放り投げ、腰にぶら下げていたホルスターから新しい弾倉を取り出して取り付ける。スライドストップを解除して、撃鉄を起こす。 「頼みましたわよ、フィリップ!!」 そう言い残してエミリアはじゃっといって背を向けた。 フィリップはもちろん、両者の中間地点にいたKは目を丸くする。エミリアはあっという間に建物と建物の暗闇の中に身を滑り込ませ、消えてしまった。 「じゃって、お前!!」 次いで文句を言おうとしたのだが、それがこちらに飛び掛ってきた。
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