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仲間 車は通りをなだらかに発車した。人を轢き殺さないように、と念を押したのが効いたのか随分ゆっくりと走っている。ローズは退屈だと思いながら、窓ガラス越しに空を見た。どんよりと曇りに曇った天気。昨日一昨日とすさまじい吹雪だったが、今日はどうだろうか。雪が降りそうな気配だと感じながら、嫌だ、憂鬱だなという感情が浮上する。それを忘れたくて、ローズは近く何か無いかと探し始めた。 「ねえ、新聞か何か無いかしら?」 ゆったりとした車の中ですることといえば一つしかない。そう、新聞を読むことだ。 「はい、お嬢様。読みかけでよろしかったなら、私がございますが」 新しいのがいいといえば、車を一度止めて買っものてきてくれるだろう。けれどそんな必要は無いし、それは無駄だ。ローズはそれでいいと答えた。ややあって差し出された新聞を両手で受け取って、ローズは膝の上で新聞紙を広げる。 「切り裂きジャック?」 妙な風刺画付きで、想像の切り裂きジャックの姿が描かれていた。 記事を読めば、一昨日の事件について書かれてある。そう、どうやら奴はまた凶行を行ったようである。 〈切り裂きジャックのつぎの犠牲者は〉 今月に入って八件目の犠牲者を出す「切り裂きジャック」事件。一連の猟奇的連続殺人事件を受けて、警察当局は血眼になって犯人を追跡中のこと。犯人に関わる証拠品の一切について黙秘を守っている警察当局の対応に、被害者の家族は憤りを隠せない。そもそも、一体誰が「切り裂きジャック」などといったのか、と警察当局は連続殺人犯と英国の例の殺人鬼との関連を完全否定。「我々がいえることは精神に異常をきたした何者かが、猟奇的な犯行を模範的に行っているに過ぎない、ということだ」と担当警察官は述べる。 しかしそんな警察の捜査を嘲笑うかのように昨日二十時四十九分。その犯行は行われた。事件はUpper East Side近くの路地裏。もともと治安のよくない場所だけに、犯人は同一犯ではなく、それを模倣したチンピラの仕業だと想定。この事件で殺されたのは、近くの市場で個人店を営んでいる 「止めて!!」 ローズは怒鳴った。そして休息に停止した車の中で新聞を握り締めた。 「どどうしたんです? お嬢様」 車を急停止させた運転手は、背後にいるお嬢様を見た。 新聞を握り締めているお嬢様は、唇をかみ締めて、小さく、ごめんなさいといった。 「ああ・・・・。切り裂きジャック事件ですね」 納得言った、というように運転手はいった。 「ごめんなさい。出して・・・・・時間に、遅れてしまうわ」 「はい」 ぽつり、ぽつりと雨が降ってきた。 窓ガラスに雪のかわりに雨が降る。 「大気の状態が随分不安定なんですね。この時期に雪じゃなくて雨が降るなんて、珍しい」 「そうね。でもきっとすぐに雪になるんでしょうね」 新聞紙に目を落として、ローズはまた読み始めることにした。 見たくない部分は読み飛ばして。きっと嘘だと、何かの間違いだと願いながら。
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