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記憶 小さく零した一言に満足そうに微笑んで、レディ・ローズはローズの傍まで歩み寄った。 ローズ。あなたがいないと始まらないの。私の大切な記憶のあなたがいないと。あなたは過去の中でいくつもの人を生かしてきた。彼らだけじゃない。寿命を迎えた人の中にだって、あなたに救われた人は沢山いるわ。それを無駄だって、無いものにするのはやめて。そんなことをしたら、いけないわ。彼らの人生はあなたの人生ではないし、それはあなたの選択ではないのですもの。彼らは彼らの人生を彼らなりに選んで生きた。それをあなたが勝手に自分のものとして解釈して価値付ける資格は無いわ。あなたはただの選択肢に過ぎない。沢山ある道のうちの一つの選択に過ぎない。 レディ・ローズは小さく微笑んだ。 ねえローズ。この二年間、私を守ってくれて本当に嬉しいわ。記憶を封じたのだって、あれのせいじゃなくて私の、あなたのためだっていうこともわかっている。優しいわね。触れることはいつだって出来たけれど触れようとすればそれを拒絶したのは、私とあなた。 ねえローズ。人はいつでも何かを選択して生きているわ。どの道に進んだって、それは誰のせいにもできない。自分で選んだことだから。けれど生きている限り、誰かと関わっている限り誰かの選択肢になることは出来るわ。相手の選択を私達はどうにもできない。それを選んだのは本人だから、私たちにはどうしようもないの。けれど、生きている限り、誰かの選択の一部になることは出来るの。無駄なんかじゃない。死ぬために生きているんじゃない。生きるために、自分のために、誰かのために、私達は生きることを選択する。ねえ、だってそうでしょう? ローズ。 ローズは目一杯に雫を浮かべた。小さなローズ。ずっとそこで守って、待っていてくれた。この暗い、氷のような闇の底で。だから今度は、陽だまりを知っている自分が彼女を引き上げて助けるのだ。 あなたは私を助けてくれた。生かしてくれた。守ってくれた。そう、あなたが選択したから。ありがとう、ローズ。ねえ、だから、よかったことまで否定しないで。 私たちに陽だまりを教えてくれた人達のことまで。 小さなローズはうずくまった。膝の間に顔を伏せて、小さく泣いた。小さな小さなその肩をローズの手が触れる。 ローズ。 行こう。 どちらが言ったのか、もうわからない。 氷は溶け、後は光に向けて進めばいいだけだったからだ。
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